対IMSA用Z33(みたいな)


 トラックスタンスには明確なルールがある。“車高さえ低けりゃ、あとは一切不問。キャンバー角も盛り放題。タイヤとホイールの幅があってなくてもお好きにどーぞ"的な解釈の上に成り立つ通常運転モードのスタンスとは違い、その立ち姿のままでスピード感にあふれ、しかもクールでなければならぬというシバリの上に存在している。で、そんなトラックスタンスのお手本として重宝されているのがレーシングカーのスタイルなのだが、福岡・ネオプロジェクトが目をつけたのは、70年代のアメリカを連想させるIMSA(イムサ)仕様。そこで、トラックスタンスとIMSAのコラボレーションをZ33フェアレディZのボディ上で表現した、斬新なる1台を今回のカバーカーとして迎えてみることにした。
 まずは見慣れたZ33を別次元のスポーツカーへとバージョンアップさせる秘密兵器、“ベルスマーレ"のボディキットから注目してみたい。これはネオプロジェクトが会社設立20周年を機に立ち上げた、新たなるエアロブランドの名称。同社の看板商品として名の知れた“危低”ブランドは、どっちかってゆーとドリフト/ヤンチャ/ハデなどの印象が濃いめだったが、こっちはトラック/アダルティ/クールといった雰囲気に重きを置き、完全なる差別化を果たしているのが見事だ。
 デザイン&製作を任されたのは、ネオプロジェクト代表・毛利万樹サンの長男・龍也サン。彼のエアロ製作方法は独特で、ラフスケッチ1枚すら描かない。つまり、製作過程において最終完成形を知っているのは龍也サンのみ。彼の脳内で熟成されたイメージが腕、手、指へと伝わり、アウトプットされていくのを、周りはただただ見ているしかない。そして、アーティスティックな製作方法をとるだけあって、彼が目指しているのは、履けるホイールサイズから逆算したり、全幅の数字を自慢するためのフェンダーなんかじゃない。
「Z33のスタイリングがベストになる瞬間を切り取って、カタチにしました。よく『見た目と機能性を50:50にした』みたいな表現が使われますけど、そんなんじゃダメ。自分が目指すのは100:100。どっちにも最高を求めたい(笑)。
 そして、23歳の自分にとって70年代のIMSAを走っていたS30Zやポルシェ935はリアタイじゃないですけど、テレビで見て素直に憧れました。なので、自分がレーシングカーにオマージュを捧げるとしたら、これしかないかなと(笑)」
 と、龍也サンは構想の背後にあったストーリーを話す。


 キットはフロントバンパー/フロントフェンダー/サイドステップ/リアフェンダー/リアバンパーの5品目8点にて構成。数値的にはフロント片側70㎜/リア片側130㎜ほどデカくなり、全幅は2150㎜にまで到達だ。
 また、このキットにはもう1つ強めのクセがあって、厚めに作られているためペナペナしていないのだ。これってボディの個体差がもたらす歪みに対応しにくくなるため、取り付け時にメチャ苦労しそうなカンジがするが、厚くなった分、ウラ側を削ることで個体差に対応でき、龍也サンのイメージどおりのフォルムをZ33に写し出すことができるのだという。
 塗装とパーツ選びなどの仕事は、次男の誠也サンの担当だ。龍也サンから受け取ったワイドボディのバトンを最大限に生かすべく、ボディカラーにはあえて純正のバーニングレッドを選択。付属品はボンネットエンブレム以外をデリートし、ワイパーやドアミラー、ドアハンドル、ゴム製リップ、326パワーのヤバキングホイールなどをツヤ消しの黒で引き締める。
「自分たちの理想は、Z33をスーパーカーのレベルにまで引き上げること。なので、スタイリングの美しさを見ていただきたくて、シンプルなカラーリングを採用しました。自分的にこだわったのは、タイヤのレタリングです。ステッカーを使ってキレイにまとめることもできるんですけど、スプレーとテンプレを使って雑なカンジを演出してます。全部キレイにまとめないで、わざと雑味を加えることで、ボディのキレイさを引き立てることができますから」
 と、誠也サンは理詰めでZを頂点へと押し上げる。
「“売れる・売れない"よりも、まずは自分たちが本当に乗りたいクルマを作る」という父の教えを受け継いだ毛利兄弟の自信作。ぜひ一度実物を見て、その迫力と美しさと品質を感じてもらいたいと、切に願う。


「IMSAを夢見たZ33だからこそ、走っている瞬間にこそ最高に輝くのではないか?」。そんな想像から路上へと連れ出してみた。走行時の低姿勢を優先して326パワーのチャクリキダンパー+チャラバネ(F=46k、R=18k)をセットしたが、その乗り心地は意外と思えるほどにゴツゴツ感がなかった。


前後フェンダーの張り出し加減は、全体のバランスから龍也サンが弾き出した絶品のボリューミーさがたまらない。念のため寸法をお伝えしておくと、片側F=70mm/R=130mmの4XLサイズだ。ウイングはネオプロジェクトの危低ウイング1800mmを使うが、ステーと翼端板は新開発品を使用。アンダーにはド派手なディフューザーを設けず、チタンルックの2本出しマフラーのみで潔く勝負をかけた。


前後のフェンダーに、ビス留めのガイドとなる切り欠きがない。それは「ビス位置を自由に決めてほしい、パテ埋めして一体感を出してもらっても構わない」という、製作サイドの配慮から。


前期型をベースに選んだのは、ボンネットのプレスラインが後期型よりシャープゆえ。バンパーの開口部は大きさこそ純正と大差ないものの、奥に向かって角度をつけず、ストレートなラインで伸ばすことで存在感を強める結果に。「なるほどっ!」と思ったのは、バンパー下の黒いゴム部分。ゴム製なので地面スレスレのポジションにあっても割れる心配がないだけでなく、センター、カーブの部分、フェンダー側でそれぞれ100/90/80mmと、適切な幅に変える手間も惜しまない。現在、カナードも鋭意開発中との情報アリ。


ツヤ消し黒+金ピアスのヤバキングスポークは、レーシングモデルを意識したこだわりの18インチ(F=10.5J/R=12.5J)。ネオプロジェクトとベルスマーレのロゴをスプレー書きにして、ワザと雑味を演出したのは、フィニッシュワークを担当した誠也サンの高めな意識の産物だ。


イヤを外して326パワー製の車高調&バネ、ブレンボのブレーキを拝む。写真はリア側で、4ポットキャリパー+330mmの2ピーススリットローターのコンビでまとめられた。フロントはキャリパーが6ポットへと増強される。アーム類の変更/加工は一切ナシとのこと。


ステアリング、シフトノブ、バケットシートの主要パーツは、すべてスパルコにて統一。これはカート時代から龍也サンが慣れ親しんできたブランドだから選んだそう。


ネオプロジェクト代表の毛利万樹サンをセンターに、右に龍也サン、左に誠也サンの布陣。“危低”や“ベルスマーレ”のような製品を生み出す背景には、親子そろってドリフターで、兄弟そろってカートのチャンピオンだったという“走れる腕”があることも事実として隠せない。

source:ネオプロジェクト 092-834-9492 https://www.neo-pro.net 
spl thanx:326パワー 082-426-3260 http://www.326power.co.jp
photo:Hirotaka Minai 
text:Akio Sato(rsf)

★パーツ構成
BASE CAR:2003 NISSAN FAIRLADY Z EXTERIOR:NEO PROJECT BELLUS MARE WIDE BODY KIT/危低WING/WING STAY for Z33/NEW WING TIP PLATE/OPTIONAL RUBBER LIP、
GENUINE BURNING RED PAINT、HEAD LIGHT INNER/EMBLEMS/WIPER ARM/DOOR MIRROR BASE/DOOR HANDLE MATTE BLACK PAINT、REAR EMBLEM DELETE
WHEELS:326 POWER YABAKING SPOKE(F=18×10.5J-34、R=18×12.5J-59)、NISMO WHEEL NUT
TIRES:KUMHO ECSTA V700(F=265/35-18、R=335/30-18)、NEO PROJECT BELLUS MARE WHITE LETTERING
SUSPENSIONS:326 POWER CHAKURIKI DUMPER/CHARA BANE(F=46k、R=18k with HELPER SPRING)
BRAKE:BREMBO F50 CALIPER(F=6 POT+330mm ROTOR、R=4 POT+330mm ROTOR) EXHAUST:TITANIUM COLOR PAINT
INTERIOR:SPARCO R325 STEERING/SHIFT KNOB RACING SILVER/EVO L QRT BUCKET SEAT×2

Stance magazine #45 巻頭:MODS系スタンスの作り方 より